不動態化処理とは、ステンレスなどの金属表面に不動態被膜(酸化クロム被膜)を化学的に形成・強化し、耐食性を高める表面処理です。
研磨のように表面を削ったり平滑化したりする工程ではなく、表面の化学的な安定性を高めることが目的となります。ステンレスは本来、大気中で自然に不動態被膜を形成する性質を保有。しかし溶接、切削、研磨などの加工工程で被膜が破壊・汚染されることがあり、不動態化処理はこの被膜を確実に再形成させるために行います。
不動態化処理のみでの依頼は可能です。研磨が不要で、耐食性の付与だけが目的であれば、単独処理として対応できます。
ただし、以下のような場合は研磨との組み合わせを検討した方がよい場合があります。
不動態化処理と電解研磨は、どちらも「ステンレスの耐食性を高める」効果がありますが、アプローチと得られる結果が異なります。
| 比較項目 | 不動態化処理 | 電解研磨 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 耐食性の付与 | 平滑化+清浄性+耐食性 |
| 原理 | 化学薬品による被膜形成 | 電気化学反応による溶解・平滑化 |
| 外観の変化 | ほぼ変わらない | 均一な光沢が生まれる |
| 寸法の変化 | ほぼない | 数μm〜数十μm溶解 |
| 表面粗さ(Ra) | 変化しない | 低減方向に作用 |
| 清浄性の向上 | 限定的 | 高い |
耐食性だけが目的で、外観や寸法を変えたくない場合は不動態化処理が適しています。平滑化や清浄性も必要な場合は電解研磨の方が良いと思います。
加工後のステンレス表面には、溶接スパッタ・切削油・鉄粉など被膜を劣化させる要因が残留していることがあります。不動態化処理はこれらを化学的に除去し、クロムリッチな不動態被膜を再形成します。
三和産業の分析データでは、不動態化処理を加えることで以下のような耐食性の向上が実証されています。
| 表面処理 | 孔食電位 |
|---|---|
| 未処理 | 160mV |
| #400バフ研磨 | 307mV |
| 電解研磨 | 401mV |
| 電解研磨+不動態化処理 | 964mV |
電解研磨 + 不動態化処理の組み合わせでは、孔食電位が未処理の約6倍(964mV)に達し、極めて高い耐食性が確認されています。
電解研磨 + 不動態化処理により、Fe溶出量が6.63ppb → 0.64ppb(約1/10)に低減。医薬品設備や食品設備での採用実績も増えている処理です。
不動態化処理は溶解量がごくわずかであり、外観や寸法にはほとんど影響しません。研磨のように表面の見た目が変わることもなく、加工後の寸法精度を維持したまま耐食性を付与できる点が特徴です。
溶接焼けが残ったまま不動態化処理を行っても、十分な被膜が形成されない場合があります。表面の汚染状態によっては、酸洗いや研磨などの前処理が先に必要です。
塩素イオン濃度が高い環境や、高温・多湿条件では不動態被膜だけでは耐食性が不足するケースがあります。使用環境の情報を共有いただくことで、適切な処理の組み合わせを提案しやすくなります。
| ステンレス | SUS304(L)・SUS316(L) |
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